高速PLC

(当記載内容は、2012年時点の情報を元にしています)

 

 

1 高速PLCの概要

  高速PLCは2MHz~30MHzの帯域を使用して、主に宅内に利用する高速通信を目的とした電力線通信である。
 その高速性から、ハイビジョン画像の伝送やインターネット(ルータを介して)の高速通信などに利用することが可能である。
 国内においては宅内のみではあるがHD-PLCやHomePlugの機器が普及をはじめ今後はIEEE1901の制定にともない大きな飛躍が予想される。


 ただし高速PLCといっても、高速性のみに着目して商品化されいているわけではない。
 図3-1は交流電源の波形であるが、一般的にGainのピーク周辺はノイズが大きくこのタイミングにデータを送っても誤りをおこしてしまう。 逆にGainのゼロクロスの近傍はノイズが少なくこの区間は通信に適している。 そこでこの期間(約3msec)に1パケットを送りきってしまえば安定した通信に使用できるというものである。
 この方式によりトータルのパフォーマンスは低速であるが、瞬時に高速でパケットを送りきってしまうため誤りが少ない。 このように高速PLCを低速に使用するという例もある。

 

図3-1. ゼロクロス近傍のエラー発生率

 

図3-1. ゼロクロス近傍のエラー発生率

 

 日本では最も利用されているのは図3-2に示すようにPCとルータ間をつないでインターネット利用するケースが最も多い。 このための機器も様々なメーカより販売されている。
 特に無線LANのつながらない住居ではイーサネットケーブルは配線することなく、既存のコンセントを利用できるため、代替えのない PLCならではの領域ということができる。

図3-2. 国内での利用形態

 

図3-2. 国内での利用形態

 

2 高速PLCの研究事例

 高速PLCはすでに実用化されているが、宅内のコンセントすべての関係において100%通るものではない。それは低速PLCの「低速PLCの技術課題」の項に指摘したような原因が考えられる。
 このため実験場所としてPLCハウスなるものが福岡のパナソニック内に立てられた。

 PLCハウスの見取り図は、図3-3と図3-4に示すとおりである。
 コンセント数は約50個ほどあり、ほとんどに家電製品が準備され実データの収集を行うことができる。

図3-3. PLCハウス 1階見取り図

 

図3-3. PLCハウス 1階見取り図

 

1階部分には配電盤がおかれそこからL1、L2に分岐されている。
 ここの代表例は台所機器などが中心である。

 

図3-4. PLCハウス 2階見取り図

 

図3-4. PLCハウス 2階見取り図

 

 2階は寝室など個別のPCやTVなどの機材がならぶ。
 L1,L2は1階、2階とそれぞれに分岐されている。

 

図3-5. コンセント間の組み合わせによるスピードと減衰

 

図3-5. コンセント間の組み合わせによるスピードと減衰

 


 PLCハウスの実験結果例として図3-5に示すように、任意のコンセント間の組み合わせによりスピードと減衰の関係をグラフ化したものである。
 この例では

  1. 減衰が深いとスピードが遅くなり、60dB減衰すると通信できない
  2. 分電盤の同一電力線上のコンセント間では良好な通信が得られる

といったことは実測できる。

 

3 高速PLCの普及について

 高速PLCはすでに実用化から普及の段階にはいっているが、ある程度までは普及したがその後伸び悩んでいるという現実があるのも事実である。
 これは方式の違い(方式が異なるものが混在すると通信できなくなる)ということに要因があると思われる。 この阻害要因は標準化方式(IEEE1901)により改善可能でありすでに次のステージに移ったということがいえる。


 

4 高速PLCの展望と課題

 今後、高速PLCの展開として最も重要なファクターは、従来のような外付けのアダプターではなく機器内蔵でなければ大きな発展は見込めない。 PCはもちろんであるがTVのように機器にユーザが意識しなくても使える環境が必須であろう。
 そのためにはさらなり信頼性の向上、LSIの超低価格化が必須でありその進展が期待される。