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PLC (電力線通信) の概要
(当記載内容は、2012年時点の情報を元にしています)
1 PLC (電力線通信) とは
電力線を通信回線としても利用する技術。 450kHz以下の周波数を用いるものを低速PLC、2-30MHzを用いるものを高速PLCと呼ぶこともある。
10kHzから450kHzまでの周波数を用いた製品のデータ通信速度は、9600bps程度である。
2006年10月に総務省が、屋内に限り2MHzから30MHzの周波数使用を認める項目を追加する省令改正をしたのを受けて、2006年12月から高速電力線通信対応製品が流通している。
電力線通信、PLC(Power Line Communication)、PLT(Power Line Telecommunication)とも呼ばれる。
図1-1. PLCで使用する周波数帯域
図1-2に使用する帯域のS/Nを示す。図からもわかるように低速PLCではS/Nが大きく高速PLCの帯域ではS/Nが少ないという特徴がある。
図1-2. PLCで使用する帯域のS/N
実際にPLCがどのような形態で使われるかというと、図1-3に示すように家庭内で通常使われているコンセントに
接続して屋内の通信のためのPLC商品は国内では数多く商品化されている。
法制度の関係でまだ宅外への通信は認めてられいないため規制緩和により今後期待されているところである。
図1-3. 国内でのPLCの利用形態
日本国内は下記に示す法令で定められている。
この法制度は日本、欧米、中国などでそれぞれ異なり共通化されていないという問題は指摘されている。
第一節 通則
(通信設備)
第四十四条 法第百条第一項第一号の規定による許可を要しない通信設備は、次に掲げるものとする。
一 電力線搬送通信設備(電力線に一〇kHz以上の高周波電流を重畳して通信を行う設備をいう。以下同じ。)であつて、次に掲げるもの
(1) 定格電圧一〇〇ボルト又は二〇〇ボルト及び定格周波数五〇ヘルツ又は六〇ヘルツの単相交流を通ずる電力線を使用するものであつて、その型式について総務大臣の指定を受けたもの
(2) 受信のみを目的とするもの
二 誘導式通信設備(線路に一〇kHz以上の高周波電流を流すことにより発生する誘導電波を使用して通信を行う設備をいう。以下同じ。)であつて、次に掲げるもの
(1) 線路からλ/2π(λは搬送波の波長をメートルで表したものとし、πは円周率とする。)の距離における電界強度が毎メートル一五マイクロボルト以下のもの
(2) 誘導式読み書き通信設備(一三・五六MHzの周波数の誘導電波を使用して記録媒体の情報を読み書きする設備をいう。以下同じ。)であつて、その設備から三メートルの距離における電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下のもの
(3) 誘導式読み書き通信設備であつて、その型式について総務大臣の指定を受けたもの
2 前項第一号の(1)の総務大臣の指定は、次に掲げる区分ごとに行う。
一 一〇kHzから四五〇kHzまでの周波数の搬送波を使用する次に掲げる電力線搬送通信設備
(1) 搬送式インターホン(音声信号を送信し、及び受信するものをいう。以下同じ。)
(2) 一般搬送式デジタル伝送装置(デジタル信号を送信し、及び受信するものであつて、四〇デシベル以上の減衰量を有するブロッキングフィルタにより他の通信に混信を与えないような措置が講じられた電力線又は他への分岐がない電力線を使用するものをいう。以下同じ。)
(3) 特別搬送式デジタル伝送装置(デジタル信号を送信し、及び受信するものであつて、使用する電力線に制限がないものをいう。以下同じ。)
二 屋内において二MHzから三〇MHzまでの周波数の搬送波により信号を送信し、及び受信する電力線搬送通信設備(以下「広帯域電力線搬送通信設備」という。)
総務省e-Gov 電波法施行規則 抄より抜粋
また法制度以外にも、国ごとに推進している方式も異なる。
高速PLCのジャンルにおいては紆余曲折の結果一応標準化が行われたが、これからの低速PLCのジャンルにおいては様々な方式が濫立しており、表1-1にその方式の一覧を示す。
表1-1. 国別PLC推進方式
団体/国 | 方式名/メーカー | 変調 | 帯域/データレート |
---|---|---|---|
PRIME Spain |
PRIME Yitran/Landis+Gyr STm/TI |
OFDM | 45k - 90kHz 21.4k - 128.6kbps |
ERDF France |
ERDF-G3 - |
OFDM | 35k - 91kHz 3.2k - 34.8kbps |
Enel Itally |
- Echelon |
- | - - |
IEC France |
IEC61334 - |
S-FSK | 20k - 100kHz 2.4kbps |
HomePlug USA |
HomePlugCC - |
DCSK | 100k - 400kHz 1.25 - 7.25kbps |
- China |
DL/T645 | DCSK=SS | - 2.4kbps |
これらの方式の普及の鍵を握るLSIもPRIME、ERDF-G3など登場し、国内においても実証実験がはじまりつつある。 ISO、ITU、IEEEなどの標準化の議論も最近特に加速をつけて活況を呈しているがまだ決定的な方式はきまっていないのが現状である。
2 PLCの歴史
もともとPLCの技術は電話線はないが電力線だけはあるような過疎地域や山岳地域などで、電話利用ではじめようとしたのが発端であるが、
しかし送電線の高電圧を介するため、その設備は大掛かりな物になり一般利用はほとんど行われず、電力会社の保守用に利用されていたものであった。
その後、単なる電話としての利用にとどまらず、デジタル信号の伝送といったアクセス系への応用に発展し、インターネット網の普及とともにさらに役割をひろげつつある。
また日本のPLCの歴史は、2001年「e-Japan重点計画(IT戦略本部)」で、「電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大の検討」が提言されたことに始まる。
その後、2006年には総務省の情報通信審議会情報通信技術分科会CISPR委員会(国際無線障害特別委員会)および、高速電力線搬送通信設備小委員会にて審議が開始され、
2006年末にはPanasonicなどから、初めてPLC機器が発売された。
3 PLCが注目される理由
それではなぜPLCがアクセス系で脚光をあびつつあるかについて、無線LAN(Wifi)との比較により明らかにする。図1-4はその比較したものである。
特に壁などの障壁などにより無線LANでは全く不可能な伝送を、コンセントさえあれば容易に接続できるという大きな利点がある。
また、最近では、環境問題とうことで消費電力ということが注目されているが、この点においてもPLCが優位であることは注目に値する。
図1-4. PLCと無線LAN(Wifi)の比較
最近脚光を浴びているスマートグリッド(smart grid; 知的な電力網)とは、人工知能や通信機能を搭載した計測機器等を設置して電力需給を自動的に調整する機能を持たせることにより、省エネとコスト削減及び信頼性と透明性(公平性)を向上させるため、電力供給を人の手を介さず最適化できるようにした電力網である。
最小のコストで送電網を構築することに狙いがあるため構築コストの低減が大きな課題であり、PLCの技術は図1-5に示すスマートメータなどの各種メータ類など中心的な技術であるといえる。
図1-5. スマートグリッド
このスマートグリッド構想を実現するための最大の課題は技術面だけではなく、前段で示した法規制による制約がある。この制約がスマートグリッドそのものというより、限られた電波帯域の割り当てが歴史的な既得権のうえにあり、それぞれの帯域の事情によりPLCでの使用が制限を受けてしまうことにある。
図1-6に日本、アメリカ、EU地域の電波の割り当て状況を示すが、特に日本における屋内使用限定の周波数帯域は世界と比較しても日本が制約うけていることが明らかであるといえる。
図1-6. 日本、アメリカ、EU地域の電波割り当て状況
このような制約のなかで高速PLCは日本が中心となって規格を策定したHD-PLCと、アメリカ主導ですすめられたHomePlugが合体してIEEE1901という規格が最近制定され今後の普及が期待されている。
図1-7は低速PLCから高速PLCの規格の相関図であるが高速PLCのジャンルはIEEE1901によりはじめてひとつになったということができる。
CEPCA(CE-Powerline Communication Alliance)という団体で作られた規格で、同団体の中心的存在でもあるパナソニックの登録商標(日本第4926446号)。 変調方式にはWavelet OFDM/PAM、メディアアクセス制御方式はTDMA・CSMA/CA、暗号技術にはAES 128bitを採用している。親機が電源OFFの場合、全機器が通信不能となる。
使用周波数帯は4~28MHz。最大物理速度(PHY)は190Mbps、試験装置で測定した実効速度(TCP)は最大55Mbps。通信距離最大150m。
ラジオNIKKEIとアマチュア無線で使用する周波数帯全域にノッチをかけている。フレキシブルノッチであるが、ユーザーは任意にノッチ周波数を変更できない。
「電力線搬送通信」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 より引用
HomePlug Powerline Alliance(HomePlug)はアメリカ合衆国における電力線搬送通信の業界団体である。 約50の企業が参加し、電力線搬送通信の仕様を定義している。
HomePlug 1.0 と HomePlug AV という2種類の仕様があり、家庭内での電力線で各種機器を接続するのに使われる。
HomePlug 準拠の製品をさらにイーサネット、USB、IEEE 802.11などでパーソナルコンピュータと接続する。 HomePlug 準拠製品同士は単に壁のコンセントに接続するだけで相互に接続される。
HomePlug の発生する高周波が各種機器に悪影響を及ぼす可能性があるため、HomePlug 製品は延長コードなどを使わずに直接壁のコンセントに接続するのが望ましい。
「HomePlug Powerline Alliance」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 より引用
図1-7. 低速・高速PLC 規格方式 相関
低速PLCの規格は高速PLCが宅内での利用が中心であるのに対して、低速ではあるが屋外の利用、すなわちネットワークインフラへの接続を目的とし、
スマートグリッド構想においても中心的な役割をはたすため、規格も群雄割拠でしのぎをけずっているのが今の状況である。
図1-7のブルーの部分が低速PLCの方式であるが、今後どの方式が主流となるかについては予断を許さない状況である。